遠州屋小吉

遠州屋小吉

『俺のチョウチョに手を出すな！』

 

（練習後。部室にて）　　――青春学園中等部テニス部――

 

桃城　　「（ふと思い出したように）――なぁマムシ。お前、チョウチョ結びできる？」

海堂　　「はぁ？」

桃城　　「もいいや。ちょっと靴ひも見せやがれ」

海堂　　「なにすんだてめぇ！」

桃城　　「いいから見せろって！」

越前　　「……なにしてンすか、センパイたち」

大石　　「こらこらお前たち、ケンカするんじゃない」

桃城　　「違っ、違うンすよ先輩！　俺はただチョウチョ結びを確認したかっただけで――」

河村　　「チョウチョ結び？」

桃城　　「昨日、妹のヤツに言われたんすよー、“おにいちゃんてばチョウチョ結びも出来ないの～”って！」

菊丸　　「（桃城の足元を覗き込んで）――でも桃、ちゃんと結べてるよ？」

乾　　　「いやよく見ろ菊丸。輪っかの部分がタテになっている。正しくは横だ」

不二　　「英二のチョウチョ結びもタテになってるね」

菊丸　　「にゃ？」

越前　　「部長のもそうっす」

不二　　「ホントだ」（クス

手塚　　「……――コレはこう云う結び方じゃないのか？」

河村　　「う～ン、似てるけどやっぱ違う、かな」

手塚　　「………………」（足元に視線を落とす

乾　　　「……たまに思うんだが、手塚って――」

不二　　「ふふふ、そうだね」（クスクスクス

菊丸　　「大石ぃ～、ねぇコレどーやったらチョウチョ横になんの～？」

大石　　「え？　ああ。――だから最初にこうやって輪を作るだろ。そこへこうもう片方の靴紐をかけて……」

海堂　　「ちょ、あのっ！」

桃城　　「大石センパイ！　俺も！　俺にも教えてください！」

手塚　　「………………」（目で

不二　　「俺も教えてもらおうかな」

河村　　「不二も結べないのか？」

不二　　「いや結べるけどね」（笑顔

越前　　「よく見えないっす。桃センパイどいて！」

海堂　　「ってだからっっっ、何で俺のスニーカーでチョウチョ結びの練習するんすか！　放してください大石先輩」

大石　　「あ、すまない。つい――」

海堂　　「ったく」

菊丸　　「なんだよ―、ちょっとくらいいいじゃん。海堂のケチー」

桃城　　「ケチー」

手塚　　「ケチー」

海堂　　「な！？」（ガーン

 

 

　　　　　　　　　　　（おわり）